被害者意識の使役表現


「…私を、なぜなの、教会のいちばん後ろの席に、一人ぼっちで座らせておいて、二人の幸せ見せるなんて…」


http://www.youtube.com/watch?v=RXpyrX8Q3Gc


むかし非常に流行って一部で物議をかもしたこの曲に出てくる上の表現について、ひとこと言ってもいいでしょうか。


この文では使役表現を使うことで話し手の被害者意識(「被害妄想」とまでは言わないことにしますが)を表しているわけですが、それがどういう仕組みによるのか、ということです。




『言語学の教室 哲学者と学ぶ認知言語学 (中公新書)』で扱われている、典型的でない使役表現の中に、


「望ましくない事態が発生するのを防ぐ責任がその人にあるのに、その人がその責任を全うしなかったため、そのような事態が発生してしまった」


というタイプのものがあります。

それを、「被使役者が話し手」という形で使うと、「話し手自身の、話し手自身にとって望ましくない行動の責任を、他者に帰属する」ということになって、被害者意識を表すことができる、ということでしょうか。

ということで。