「病気と気づかれていない病気」

http://www.astellas.com/jp/corporate/brand/ad/tv/bokuha10-1.php


このコマーシャルに出てくる


「世界には、病気と気づかれていない病気で苦しむ人がいるから」


という表現の背後にある「病気」観、というか、実念論的なカテゴリー観が、私には興味深いです。


コマーシャルに出てくる「おしっこが近い」は、昔はたぶん「病気」とはされず、「体質」ないし「老化」とされていたものでしょう。それが今では「病気」とされている(らしい)。この変化をどう解釈するかについて、少なくとも次の2つの可能性があります。


(あ)「病気」というのは、客観世界の一部として確定した境界を持つものであり、概念としての「病気」はそれを写しとったものである。「病気」概念はこのように客観世界に根拠を持つものであるから、昔も今も変わらない不変のものである。「おしっこが近い」が「病気」とされるようになったのは、これが「病気」に該当することが昔は理解されていなかったが、ある時期から理解されるようになったということである。


(い)「病気」概念は(究極的には外部世界に根拠をおきつつも、直接的には)社会的な慣習ないし規約によって決まるものであるので、変容の可能性を持っており、実際変容している。「おしっこが近い」が以前は「病気」と見なされなかったのに今では見なされるようになったのは、「病気」概念が変容したということである。


このコマーシャルに出てくる「病気と気づかれていない病気」という言い方は、(あ)の病気観を前提にしているように思われます。一方私などは(いつどういう根拠でそういう見方をするようになったのか自分でも覚えていないのですが)、(い)の見方をしています。


なので、テレビでこのコマーシャルを耳にするたびに、「おもしろいなあ」「でもちょっと違うかなあ」と思うわけです。